企業イメージ確立 と マーケティング戦略(和光堂さんの場合)

企業イメージ確立には、企業アイデンティティ作りが必要である。

 そのためには、企業理念、企業コンセプト、企業ドメインが独自的であり、他とは差別的でなければならない。

 1917年に日本最初の粉ミルク、1937年に日本で最初のベビーフードを作った和光堂の経営理念は、「私たちは乳幼児の健やかな成長と人々の健康を応援します」という企業の独自性を表現したものであり、食育指針を作って、直接の利益を生むわけではない相談・講習会で離乳食から始まる食育の大切さについて啓蒙を行い、乳幼児の健やかな成長と健康を応援する姿勢を継続して示しています。
 企業ドメインについては、乳幼児の食品とその周辺商品である医薬品、衛生用品が中心であり限定的で、和光堂と言えば赤ちゃん商品の会社というイメージは広く浸透しています。「ずっと、赤ちゃん品質」をお客様に約束する最も大切な価値とする企業コンセプトは企業ドメインと明確に繋がっているものとなっています。

 上記のように企業イメージを確立できているベビーフード・粉ミルクメーカーである和光堂の成長図式をアンゾフの製品・市場マトリックスで考えてみると、

          既存製品    新製品
既存市場 ①市場浸透戦略 ②新製品開発戦略
新市場    ③市場拡大戦略多角化戦略

①市場浸透戦略は、顧客ベースはむしろ少子化で縮小しており難しい。

②新製品開発戦略は、製品ラインの拡大として主にベビーフードの分野で行われている。長期の不景気による収入低下で共働きの家庭が増加しており、時間と手間を省くことのできる離乳食のニーズは増大している。以前は補助的に使われていたベビーフードが主流となってきたことにより、品揃えの拡充は利用者の重要なニーズでありそれにメーカーが答える形になってきている。
 実際に和光堂のホームページで、ベビーフードを数えてみたところ、フード174SKU、飲料27SKUと1メーカーで200SKUを超える豊富な品揃えとなっていました。
 同時に1937年に日本で最初のベビーフードを作った和光堂では食育指針を作って、相談・講習会で「離乳食から始まる食育」の大切さについて啓蒙を行い、安全・健康のイメージ作りを行っています。

③市場拡大戦略については、国内の出生が増えない以上グローバル化が不可欠となります。
 メラミン混入をはじめとする中国製ミルクの健康被害報道以降、日本製の粉ミルクを求める中国人が急増しています。中国政府は口蹄疫発生時に輸入禁止した日本製の粉ミルクを、国民の自国製の粉ミルクへの不信感向上が止まらないことにより、尖閣問題が発生したにもかかわらず解禁しました。この流れはしばらく続くものであり、日本の粉ミルクメーカーは今まで通り、またはそれ以上に安全イメージを確立することにより、広大な中国という市場で強みを持つことになります。
 1955年に砒素ミルク事件を起こした徳島工場を森永乳業が11年9月に閉鎖する方針を決めたことも、国際市場を意識した安全イメージ向上による市場拡大というマーケティング戦略に関係があるように考えられます。

多角化戦略
 少子高齢化が進むという間違いなく進行を続ける社会変化に対応するため、和光堂をはじめとした各ベビーフード企業は高齢者向け食品に注力を進めています。これはベビーフードのノウハウを多く流用することが可能なため、経営資源活用によるシナジー効果が得られる集約型多角化戦略と言えます。赤ちゃんが主要ターゲットであったベビーフード・粉ミルクメーカーのドメイン高齢者に拡大することは今後も続いていくと考えます。

参考)和光堂株式会社ホームページ  http://www.wakodo.co.jp/