医薬品ネット通販議論 と ある動画 と 論文

 twitterでのフォロー関係にある方の呟きについて、とても共感しました。

↓これがその動画。

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 この2件は医薬品販売の店頭実態について問題があるという点での価値がある動画(特に後者の店舗は何らかの処分も必要でしょう)ですが、この動画はネット通販議論と結び付けるのは無理があるように思えます。

◆三段論法による詭弁の例
否定二前提の虚偽:「すべての犬は猫でない」と「すべての子猫は犬でない」から「すべての子猫は猫でない」はまちがい。
不当肯定の虚偽:「天才は狂人である」と「彼は狂人ではない」から「彼は天才でない」とはいえない。
特殊二前提の虚偽:「ある大男は詩人でない」と「ある詩人は大男である」から「ある詩人は詩人でない」とはいえない。 
媒概念曖昧の虚偽: 「塩は水に溶ける」と「あなた方は地の塩のようだ」から「あなた方は水に溶ける」ことにはならない。 
四個概念の虚偽: 「小百合は女である」と「太郎の生きがいは小百合である」から「太郎の生きがいは女である」にはならない。

「2類以上の医薬品には専門家による情報提供の”努力義務”がある」と「対面販売で適切な販売ができていないケースがある」から「医薬品の内容に関わらずネット販売で良い」は間違いです。
 いずれにせよ、厚生省令での郵送禁止(他にも伝統薬のメーカー直販禁止や電話相談での販売禁止等)の内容に無理があるということも事実ですので、「ネット販売等でも副作用防止等の観点で問題のない成分の精査と更新」「ネット販売業者に対する質の担保と監査体制」「対面販売の適正なルール作り」が必要です。
 そのルールにそった上で、提供する側としてはお客様・患者さんの目線に立った情報提供の質向上が必要ですね。登録販売者もそうですが、まずは薬のプロである我々薬剤師が頑張らなければならないと思います。
 また、努力義務で全国5万軒が守れないのであれば、指定2類は義務といった形にするべきかもしれません。
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 一方、離島における医薬品インターネット購入について、丁寧な調査に基づいた論文が出ています。

http://denshi.pharm.or.jp/home/pubpharm/pubview.asp?p=y110032
 二次離島(大型離島の周辺に点在する小離島で薬局・薬店・薬剤師が存在しない)についても調査が行われた初めて?の例と思われます。
 非常に素晴らしい内容ですので全部見ていただくのが良いのですが、感じ入った部分をあげますと、

一般用医薬品を手に入れる方法として期待するものについて:今後期待する一般用医薬品の入手方法として、「今のままで十分」という回答が一次離島で70.4%、二次離島で 53.8%と最も多かった。一方、二次離島居住者において、「事前にお願いしておけば、定期的に配達」、 「緊急時でも薬剤師が配達」を期待する意見もあった。

インターネットを使用できるのに、インターネットでは一般用医薬品を購入したことがなく、その必要性も感じない理由として、「身近な薬局やドラッグストアで購入できる」とした意見が、一次離島188名(80.3%, n=234)、二次離島13名(81.3%, n=16)と最も多く、次いで「そもそも薬はインターネットで購入するものでないと考える」としたものが、一次離島121名(51.7%)、二次離島7名(43.8%)と多かった
「その他」の理由として、…顔の見えないインターネットで薬を購入する事に少し抵抗がある。やはり医者や薬剤師の方に処方される薬の方が安心できる気がする・緊急を必要とする場合に手元にすぐ届かないから・今の状況で不自由を感じていないから、といった意見が見られた。
誰に医薬品の配達を期待するか:一般用医薬品の配達は、「五島市内の薬局(の薬剤師)」にと希望する居住者が、一次離島 30名(73.2%, n=41) 、二次離島 5名(71.4%, n=7)と共に最も多かった。「五島市内の薬局(薬剤師でなくても良い)」と回答したものも多かった

 インターネットは便利で買物には使っているが、一般の買い物と違い、薬に関してはやはり顔の見える地域に根差した薬局(薬店)で購入(又は宅配)したい。ということです。

 特に離島や近隣に薬局薬店がない地域に関しては、ネット販売の適正化と同時に顔の見える販売ができるインフラ整備が必須であることもまた重要な事であると考えます。