3/26~29 宮城県石巻:JMATの災害地医療支援に薬剤師として参加しました。

※写真は支障のなさそうなものをfotolifeにアップしてます。

 震災後、以下のニュースが出た時に(現役ではありませんが)一薬剤師として”カチン”ときたことは今でも覚えています。
・日医、「JMAT」を被災地に派遣 医療介護CBニュース 3月15日(火)17時16分配信
東日本大震災の発生を受け、日本医師会は3月15日、東京都内で緊急記者会見を開き、「日本医師会災害医療チーム(JMAT)」を被災地に派遣すると発表した。被災した各県の災害対策本部などと連携し、被災地の民間病院や診療所の日常診療と、避難所や救護所の医療を支援する。石井正三常任理事によると、既に数チームが現地入りしているが、同日から「大規模な対応」を取る。 JMATが派遣されるのは、岩手、宮城、福島、茨城の4県。日医は現時点で健康支援の対象となる被災者は46万人以上と想定している。チームは、医師1人、看護職員2人、事務職員1人の計4人を目安に構成。参加を希望する医師は、所属する都道府県医師会に伝える。派遣期間は、支援先と支援医師会との協議によるが、3日-1週間がめど。日医では、計100チーム(計400人)の派遣と約1か月の支援を目指す。人数や期間は支援先の需要によって変更になる場合もある。石井常任理事はJMATの役割について、「避難所には着の身着のままで、いつも飲んでいる薬を持たない方が多数いる。薬や相談を含めた支援が心待ちにされている」と述べ、救護所での薬の処方など、地域のニーズに合わせた支援を行っていく考えを示した。

 このニュースを最初に見て、医師会の理事の方が薬に関する支援の重要性をこれだけ謳っているのに「薬剤師」という単語が出ていないことに、薬剤師として憤りを感じていました。医師会の方に…というのでなく、薬剤師に関する世間的な認知にでしょうか。

 運よく、会社の災害地支援策に1億円の義捐金や店頭募金の他に、現地への薬の無償提供とJMAT参加が加わりました。
・3/17プレスリリース http://www.cocokarafine.co.jp/ir/pdf/20110317.pdf
・3/22プレスリリース(写真は先発隊。私は後発隊でした。車がきれいですね(^_^;) ) http://www.cocokarafine.co.jp/ir/pdf/20110322.pdf
そこに立候補?して参加させていただくことができました。 ここで書いても仕方ないのですが、得難い経験をさせていただいて感謝しております。また、本当に微力ながら薬剤師として機能できた自負はあります。

 今回、参加させていただいたことで、災害医療支援における薬剤師の必要性・活躍の場を感じたので、記載いたします。
医師会より発表された医師1名、看護師2名、事務1名ではなく、薬剤師が加わったことで、2チーム合同の 医師2名、看護師3名、事務2名、薬剤師1名のチームで行動できたことは、かなり効果的であったと感じました。小規模避難所中心であれば理想形は医師1、看護師1、事務1、薬剤師1となるでしょう。
 その中で薬剤師の役割は

1)津波に流されて、飲んでる薬がわからないものの特定。
2)限られた持参薬での代替え処方提案。
3)避難所環境によっては、喘息患者が増えているので、吸入指導。これはなぜうがいをするのか、βブロッカーは発作時のみの最低限なのに、ステロイドは継続使用が必要なのはなぜかなど薬識をバックに持った吸入指導という点で看護師さんには少し難しいことであり、薬剤師が適任と思います。

4)医療用薬とOTCの使い分け。
5)薬情が出ないので、薬剤師がいれば、薬袋に何のための薬かを書いてあげられる。

 たとえば、頭痛が主訴で背景にPTSDのある避難所の患者さんにおいて、
カルテ内容と診察を小耳にしながら薬袋を書くので、
・頭痛目的のロキソニンであれば、患者さん個別に飲む目的である頭痛と書いて解熱鎮痛とは書きません
・レセコンでは自動で用法が入るだけのムコスタも口での指導と同様に、ロキソニンを飲むときに一緒に飲んで胃を守る薬と書きます
・また、この場合PTSDで眠れない方でしたので、睡眠薬ではなく、目的であるところの安眠と記載しました
 特にカルテをみながら、診察を耳にしながら薬袋書いたり、投薬できたので通常の調剤薬局での調剤以上に投薬の質は高い状態で行えたと思います。

 後発部隊としての活動の場は比較的大きな避難所でさまざまな患者さんがいる場所、ただし、体育館は安置所として使われているので、教室生活で、室内・校内の衛生環境も良いとは言えない(写真fotolifeにいくつか載せます)ところでした。


 2チーム合同(8名)で、
患者さんがいらっしゃる→事務(看護師)が問診と検温のお願いをする→看護師が血圧等バイタルチェック→医師の診察・看護師の処置→薬剤師の薬袋作成とピッキング、投薬
という流れで、10人以上患者さんが集中する時間は薬剤師のところが医師2名の薬に関する質問と調剤でかなり忙しくなるので、薬袋作成のお名前と薬品名だけ事務スタッフに協力してもらうなどのサポート体制もうまく機能したと思います。
このチームが機能することで、大規模避難所の午前診察ラッシュでお待たせする時間を少なくできました。
ラッシュが落ち着いた後は医師、看護師での教室や近隣施設への往診チーム、定置での診察チームに分かれ、往診チームの処方を作成後内容と状況に応じて薬剤師の教室、近隣投薬と事務、看護師さんによるお届けに分けることができました。
また、2チーム合同(8名)での行動となったので、病院搬送の必要な重症患者が一日一名程度発見されたので、搬送を事務(連絡、運転),看護師(ケア)のペアで行うことができました。

他のJMATチームとの違いは、薬剤師の参加(一部チームには入っていますが少数派)の他に医療用薬、OTC共に自前で持ち込んだので、日赤や保健センターにセットを借りてのチームより薬の選択肢が多く、幅の広い対応が出来たことだと考えます。
例1)集団生活で咳を気にする方に、辛い時は医療用薬、軽い時は咳、喘息の効能のある浅田飴咳止めを差し上げる
例2)花粉症に医療用内服に合わせて、複数成分のはいったOTC点鼻薬、点眼薬の同時処方。

・医療用支援物資の寄付について
医療用薬の寄付に関しては、当該地域では(地域差あると思います)日赤石巻病院に提供すれば、管理・活用に心配もないので、簡単でした。
一方、OTCに関しては、その他の支援物資以上に置いていく(または送る)だけではダメだと思っておりました。
実際、東松島市保健センターの方に寄付の話をしたところ、センター長やスタッフの方々は当初はアルコールジェル、総合感冒薬を代表に物はあって整理しきれていないので、あまり受けたくはないけど仕方ないという雰囲気でした。
そこで、物の少なくなって困っていた鼻炎薬や目薬等があることを説明して受け入れてもらい、現地では物資の過不足だけでなく、半強制的に届く支援物資の管理・整理が大変な負荷になっていることを充分承知していましたので、まずはスタッフ3名にOTCの簡単なレクチャーを一通りしたところ、こちらが驚くほど前向きに話を聞いてくれてメモまで取ってくれる良い生徒になってくれました。
内服から外用まで一通り説明したことで、多少なりとも必要な方への適切な薬の給付ができるようになったと思います。
また、かなりの混乱状況にあったので、センターの薬と寄付した薬を一通り薬効毎に整理して帰りました。